麻生太郎物語

日経新聞で連載中の「麻生太郎物語」が面白いです。

日経新聞のリンク:

https://r.nikkei.com/stories/topic_DF_TH_19012400

麻生太郎元首相は好きな政治家の一人です。
昔はそれでも、麻生さんより石破さんのほうが好きでした。
下野以降、石破さんは迎合主義的な政策や器の小ささを感じさせる発言からその評価を下げましたが、
それとは裏腹に、麻生さんはずいぶん評価を上げたと思います。

細かい発言の言葉尻を捉えてマスコミはあれこれ書き立てますが、本質的な政治、いわゆる空中戦ができる数少ない政治家の一人です。
一般大衆には見えないものが見える人、ともいえます。

前に書いたことがありますが、
一般大衆と超富裕層やものすごく頭のいい人というのは、基本的に噛み合いません。
同じ「日本語」を話していたとしても、それは言語が同じだけで、その意味や含む思想というのは蟻と象くらい異なります。

政治というのは、象の視点が必要です。
蟻が蟻の思想で大挙してモノを言うのは混乱しかもたらしません。
民主主義社会なので、当然に蟻にもモノを言う機会というのはあるわけですが、
蟻の思想である限り、その思想で国を動かそうとすると様々に問題が生じます。

例えば10年を経てなお生々しく残る民主党政権時の混乱。
その民主党政権は蟻の思想で担われた政権でした。
なお、色々言われますが、民主党の元首相3人の中では鳩山さんが「首相を担う政治家」としては一番まともでした。(もちろん不足は山ほどありましたが)

象の視点、国家的視点での言葉というのは、なかなか大衆には伝わらないもの。
その背景や基盤における情報量の違いもありますし、
物事の影響度を図る視野の広さにも著しい差があるため、会話が成立しないケースというのもたくさんあります。

なので麻生さんはなかなか万人に理解されにくいわけですが、
極めて有能な、日本を広く俯瞰することのできる稀有な政治家の一人と思います。

麻生さんはいわゆる自民党の本家本流の人です。
戦後新たに生まれた家系や核家族では、「本家本流」ということに価値を置かない人たちがたくさんいますが、本家本流というのは大きな力とエネルギーを持ちます。
(一方で新興勢力というのは、力ではなく勢いがあります。どちらにも良さはあります。)
これは、権力を持つという側面もありますが、それは副次的な効果であって、
その本質は、本家本流には長く続いてきたエネルギーがその歴史において関わってきた人やモノを巻き込む力を持つことにあります。
使い方を誤ると破綻するほどの大きなエネルギーですが、正しく使えば大きな力を持つエネルギー。
そうしたものを備えていたからこそ、国民不人気の短期間政権ではありましたが総理に登りつめることができたともいえます。

なお、面白いなと思ったのは、
麻生さんが大衆に受け入れられたきっかけがマンガであったこと。
昔、その学歴とあわせて、
「首相がマンガを読むなんて!」
と眉をひそめていた人がいましたけれど、それは雲の上の人と大衆を結ぶ一つの接点として有効に機能したように思います。

古代東洋においては、
いわゆる学問を修め国を執り仕切る一部の優秀な人たちと、
農地を耕したり狩りをしたりする一般大衆の知識レベルの差は著しく、
その一般大衆に陰陽五行や気学の思想を広めるために、十二支に動物があてられました。

絵をもって思想を伝える。
なんとなく、麻生さんの漫画による大衆との交流と似ているな、と思いました。

Photo by 五玄土 ORIENTO on Unsplash

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