金烏玉兎庵

理解の構造と共通基盤の話

Photo by 五玄土 ORIENTO on Unsplash

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本日はちょっと難解なことを書きます。
理解の構造についてのお話です。

さて、同じニュース、同じ映画、同じ本に触れても、
そこから得られる情報量というのは、
その人物の世の中を捉える枠組みの成熟度によって千差万別です。

奥深い枠組みをもって世の中を捉えている人であれば、
本を一冊書けるほどの情報量のある出来事について、
浅い枠組みでもって世の中を捉える人であれば、
歯牙にも掛けずに素通りする、ということはよくあります。

枠組みの成熟度、というのは、
法則の理解の成熟度、と言い換えることもできます。

緩慢に生きていると気付くことは少ないですが、
この世界のあらゆるものは、必ず何かしらの法則に貫かれており、

どのような分野であれ、
その分野を貫く法則を深く理解していると、
あらゆる分野において、その法則のフレーム程度は捉えることができるので、

結果として、ニュースにせよ、映画にせよ、本にせよ、
あるいは自分を取り巻く世界において起こる現象にせよ、

それがいったい何を示唆するのか?
ということに気付くことが出来ます。

このことは、
多少なりとも難解な概念を理解し、伝え、さらにその難解なテーマについてコミュニケーションをとろうとするならば、
そこには基礎的な概念、枠組みという「基礎的な理解の共有」が不可欠である、ということにも通じています。

言い換えれば、
何かしらにおいて法則のフレームを持つ人と、
まるで法則のフレームを持たない人というのは、

決定的に、理解のベースが異なる先に、

見えている世の中がまるで異なるとか、
同じ言葉を使って会話をしているように見えて、相互理解を得ることはほとんどできない、
…というようなことになります。

この世界は価値観の多様化とともに、
共通の価値観、共通の言語を持たない世界となりました。

共通の価値観、共通の言語を持つ世界においては、
法則のフレームを得ていなくても、ある程度の相互理解が実現でき、

その先においてその共通の価値観・言語を基盤とした、より高度で難解な概念の理解を共有することができたわけですが、

そうした共通の基盤が失われたこの時代においては、

ともすると、
難解な概念をなんの基礎もなく素手で扱うような暴挙、
奥深い真理を簡単な概念にデフォルメしてもてあそぶような軽挙が横行するような事態になりがちであるように思います。

難解な概念の理解、高度・高次の思考には、
十分な基礎を前提とした理解の組み上げが不可欠です。

理解の組み上げとは、
建築物の構造と同じように盤石の基礎を得て、その上に揺ぎ無く階層を重ねていく、

あの構造と同じように、
基礎的な理解の上に、初歩的な理解を組み立て、その上に少しずつ難度を上げた理解を組み上げていく、ということ。

理解の構造は、建築物の構造と相似を成しています。

さて、ではそうした共通の基盤が失われた現代において、
他人との間により高度な概念の共有、難解な事象の相互理解を得るにはどうすればよいか?といえば、

その手段が、冒頭に書いた、
「法則のフレーム」を獲得することであるといえます。

この時代において、
物事を深く理解しその理解を得ている人と本質的な意味でコミュニケーションを取ろうと思うなら、

何かしらの分野において、

自分の枠組みを選びその枠組みの世界に進み入る、
自分の言語を選びその言語の使い手の集団に進み入る、

…ということが不可欠であり、

その先において「法則のフレーム」を獲得することが不可欠です。

これはつまり、
自分の専門分野・言語と共通言語を備えることが重要である、
と言い換えることが出来ます。

真に「大人」である、ということの意味は、
自分の専門分野・言語を掘り下げて、
そのうえで、共通言語をもって世界に対峙すること、
…であり、

その両方を備えてはじめて、真に「大人」としての役割を発揮できるのだろうと思います。
その「大人」になってからが、本当の人生なのではないかな、ということを考えたのですがいかがでしょうか。

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